誰でも一度は35km地点をこえたところで、突然ペースががくりと落ちて足が思うように動かないという経験があると思います。
では、35kmの壁とは一体何なのでしょうか?
以降で、詳しく解説していきたいと思います。
糖質や脂質は口から入って消化管で分解され、肝臓を経由して、血液に乗って筋肉細胞に運ばれる仕組みになっています。
総消費エネルギー中、2つのエネルギー源が占める割合は運動強度によってその都度シフトします。
強度が低くなれば脂肪が優位に、強度が強くなると糖質が優位に消費されます。
1g4キロカロリーの糖質に比べ、脂肪は1g9キロカロリーのエネルギーが賄えるので、マラソンのような低強度の長時間運動にはもってこいのエネルギー源です。
マラソンでは脂肪を優先的に使った方が有利です。
口から取り入れられた糖質は、筋肉と肝臓にグリコーゲンという形で蓄えられ、血液中はグルコースという形で存在します。筋グリコーゲンは筋肉運動のエネルギーとして利用され、肝グリコーゲンは主に血糖値のキープをするための予備の糖質として蓄えられています。
このうち、35kmの壁問題の鍵となるのが筋グリコーゲンです。
糖質と脂質、2つのエネルギー源は運動強度が最大時の60%程度、一般人ならジョギングから適度なランニングレベルの運動を境に、脂質優位から糖質優位にシフトします。
なので、脂質優位をギリギリのラインでエネルギーを賄い続けるのがマラソン完走の鍵となります。
とはいえ、脂質の代謝には糖質が必要不可欠。
脂質は筋肉脂肪内のミトコンドリアというエネルギー生成工場で代謝されるのですが、このとき糖質の分解物であるオキザロ酢酸という物質が必要になります。
脂質の分解物と脂肪酸1分子を代謝するためには糖質1分子が使われます。
筋グリコーゲンの量は個人差がありますがおよそ350~500g。
これがちょうど枯渇するのが35km地点。
グリコーゲン不足で脂質がうまく使えなくなることがペースダウンの原因となります。
レース中、主に筋グリコーゲンが減っていくのに比例してパフォーマンスはどんどん低下していきます。
枯渇すると最大運動能力の半分程度のパワーしか発揮できません。
筋グリコーゲンの確保とともに、35kmの壁を克服するために重要なのが水分補給です。
フルマラソンを走りきる間、およそ3Lの水分が体から出ていくといわれています。
人によっては4L、タイムが5時間6時間と長くなっていくほど、さらなる発汗量が見込まれます。
体重の約2%の水分が失われると、口が渇く感覚を覚えます。
しかし、そうなるともう軽度の脱水。
それ以前に水分補給を心がけることが重要です。
脱水に関する詳細はこちらへ
また長時間のランニングでは汗とともにナトリウムやカリウムなど、体に必要な栄養素が失われてしまうことも覚えておきましょう。
走りはじめて1時間以内であれば水分だけの補給でも問題はないです。
それ以降の水分補給は糖質の補給という意味を含めて糖質+各種ミネラルが含まれたスポーツドリンクが望ましいです。