トレーニングは目的を持って行うようにしましょう。
今の自分に足りないものをしっかり把握し、足りないものを補うためにどのようなトレーニングをすべきかを考えることが最も重要です。そして、なんとなくではなくデータ化して日々少しでも成長を感じることが大事です。通勤の自転車なら今日はこのカーブを曲がるラインを少し変えてみようとか、このラインだと何秒縮まったとか、など。同じことを繰り返すのではなくこうしたらどうだろうかと常に考え、データを取り、結果を検証といった地道な蓄積をしていくこともトレーニングです。
何も考えずに同じことを繰り返しても意味がありません。
登山のトレーニングは山を歩くのが一番です。登山の基本技術、筋力、持久力がバランスよく鍛えられます。
トレーニングは体に負荷をかけることです。負荷が大きければ大きいほどそこから回復したときの効果が大きくなります。しかし、体に大きな負荷をかけることは簡単ではありません。体を守るために脳が無意識にブレーキをかけてしまうからです。
山へ行けば必ず下山しないといけません。どんなに疲れていても歩き続けなければ下山できないので自分の無意識ブレーキを超えて体に負荷をかけることができます。ただ負荷が大きすぎると事故の原因やオーバーワークにもなり本末転倒なので、トレーニングは今の自分のレベルに合った山を選択することも大事です。
自分のレベルを把握するときも「なんとなく」ではなく、「メッツ」や「山のグレーディング」のような指標を参考にするとよいです。
※ メッツ(運動のきつさを表す指標) : 運動をしているときに使うエネルギーが安静時の何倍にあたるか
メッツ | 山での登降速度(m / h) | 平地での速度(m / 分) | ||||
ザックなし | 体重の10%のザック | 体重の20%のザック | 体重の30%のザック | |||
4 | 210 | 190 | 175 | 160 | 100 | 歩行 |
5 | 300 | 270 | 250 | 230 | 110 | |
6 | 385 | 350 | 320 | 295 | 約110 | |
7 | 475 | 430 | 395 | 365 | 約120 | ジョギング |
8 | 560 | 510 | 470 | 430 | 130 | ランニング |
9 | 650 | 590 | 540 | 500 | 146 | |
10 | 735 | 670 | 615 | 565 | 162 |
1km6分台 のペース |
11 | 825 | 750 | 685 | 635 |
178 |
|
12 | 910 | 830 | 760 | 700 | 194 |
1km5分台 のペース |
13 | 1000 | 910 | 830 | 770 | 210 | |
14 | 1085 | 985 | 905 | 835 | 226 |
1km4分台 のペース |
15 | 1175 | 1065 | 980 | 905 | 243 | |
16 | 1260 | 1145 | 1050 | 970 | 260 |
1km3分台 のペース |
17 | 1350 | 1225 | 1125 | 1035 | 276 | |
18 | 1435 | 1305 | 1195 | 1105 | 290 |
ただ、毎週のように山へ行くのは難しいと思います。
次は普段の生活の中で筋力、持久力を鍛える方法もお伝えします。
標高が2,500 mを超えるような山を登る場合は岩稜帯を避けて通れません。岩稜帯で役に立つのがクライミング技術です。
クライミング技術を身につけておけば、岩稜帯が出てきてもどこに手足をおいてどのように体を動かせば楽に登れるのかがわかるようになります。
この安心感が恐怖心をやわらげ余裕を生みます。安全登山のためにぜひあなたにも身につけてほしいです。
さらに、ムーブ(体重移動)の感覚を覚えれば、普通の登山道でも余計な力を使わず楽に登れるようになります。私が所属している山の会には70歳以上の方もいらっしゃいますが、今だに私と同じようなペースで登れる方もいます。そんな人たちに共通しているのは過去にクライミングをやっていたということです。
クライミング技術を身につける一番気軽な方法はボルダーです。最近はボルダーのジムも増えてるのであなたの家や職場の近くにもあるはずです。道具もレンタルできるので動きやすい服装だけで体験できます。
ただ、ジムはオーナーさんやスタッフさんによって雰囲気がまったく違います。丁寧に教えてくれるジムもあればそんなに教えてくれないジムもあります。初心者向けの課題から上級者向けの課題まで満遍なくあるジムもあれば玄人向けの課題が中心で初心者に優しくないジムもあります。初めての人は1人で行くのはお勧めしません。経験者あるいは初めて同士など同じレベルの人と一緒に行った方が長続きすると思います。
トレーニングからは少し脱線するかもしれませんが、クライミングのもう一つよい点は”危険と困難の見極め”ができるようになることです。ここでは詳しく説明しませんが、これが身に付けば危険を回避できるようになるので事故や怪我のリスクを減らすことが出来ます。
ハイキングや縦走が中心だからクライミングは必要ないと決めつけるのではなくまずやってみましょう!
やってみると楽しいです。
すでに「腰が痛い」とか「下山時に膝が痛くなる」などの何かしらのトラブルを抱えている場合、長く登山を続けたいならオステオパシーのメンテンナンスが必要かもしれません。そもそも登山で体を痛めているわけではありません。日常生活の悪習慣によって体のさまざまな関節の動きが悪くなりその状態で登山をするから痛みが出るのです。痛みが出るのは膝でも根本的な問題は腰、股関節、足首などにあったりしますし、姿勢や身体の使い方は自分はできてるつもりでもできてないことが多いので自己判断は危険です。
身体の使い方のポイントは全身を繋げること。全身を繋げるためには身体の全関節が十分な可動性を持っていることも必要です。きちんとした知識と経験を兼ね備えた第三者に見てもらうことも大事です。そして、ケアは早め早めに行うのが基本です。
週3回ウォーキング or ジョギング or サイクリングを行いましょう。
ただ、間違ったからだの使い方をして歩いたり走ったりすると膝や腰などを痛めてしまう場合もあるので、
● 身体の使い方
● 運動生理学の基本
を参考にしてケガをしないようにしましょう。
膝に負担が少ないのが自転車です。足が地面に着かないので地面からの衝撃を軽減できます。そして、心肺機能だけなら自転車のヒルクライムが一番効果的かと思います。
トレーニング後はしっかりアフターケアも忘れずに!
山歩きの基本技術を身に付けるためには実際に山を歩くのが一番です。
しかし、、、
登山を続けても山に登るために必要な筋肉が維持されるわけではありません。
まず、登山に必要な筋肉を理解する。
次に、今の自分はどの筋肉が足りないかを把握し足りない部分を補うための筋力トレーニングを行うことがもっとも効率的です。
● 大胸筋
この筋肉が弱いとザックが後ろにひかれ、背中に負担がかかります。
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● 腹筋群
姿勢を維持するための筋肉群です。登りで腰が前屈しないようにします。
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● 大腿四頭筋
登山で最も多く使われる重要な筋群です。この筋肉群が弱いと下り坂で膝に負担がかかります。
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● 前脛骨筋
つま先を上げるための筋肉です。上がらなくなるとつまずき転びやすくなります。
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● 僧帽筋
ザックを背負うのに必要な筋肉です。この筋肉が弱いと背中や肩に負担がかかります。
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● 脊柱起立筋
姿勢を維持し、重い荷物に耐えることができます。
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● 殿筋群&ハムストリング
バランスと脚を持ち上げる。股関節の伸展などに使われる筋肉です。
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● 下腿三頭筋
下りで足関節の伸ばしや、岩場、雪渓などのつま先立ちに使う筋肉です。
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