雪山の生活技術


テン場は風向きを見ることが重要。
風が吹いてくる方向に壁を作る。
最初にプルーフで雪の深さをチェックする。
深さを把握した上で風の方向に壁を作りながらテントを張る空間を平らにしていく。
平らにしないと寝にくい。
ペグは使わずに木の枝に紐を巻きつけて雪を掘って埋める。
フライは使わない。
テントを張ったらまず銀マットを敷いて内張りを付ける。
入口の前の雪を掘って入口に座った状態で靴の脱ぎ履きをしやすくする。
ザックはツエルトにくるんでテントの外に出しておく。
靴はビニール袋に入れてテントの中へ。
濡れたもの(手袋やスパッツなど)はシュラフの中に入れて寝ると翌朝に乾いている。

トイレはテン場の近くに雪を掘って作る。
テン場から遠 すぎると行くときに大変。なるべき登山道から外れたところにする。
トイレは最後に埋める。

 

(1)幕営技術


1)雪洞について 雪洞は風の影響を受けず、温度も0度以下にはならないと言われている。雪洞には風に強いという利点があるほか、テントを持たずに行動でき荷物の軽量化にもつながるので、積極的に利用するのも良いと思う。 雪洞を掘るために必要な道具は、スコップ・スノーソーである。スコップは作業する人数分あれば、作業効率が高い。更に雪洞完成後、入り口をふさぐためにツェルトなどのシートがあると良い。 雪洞に適した地形は、掘った雪をそのまま捨てられるので斜面が適している。しかし、雪崩が起きそうな場所は避ける。雪洞の形は一般的には横穴式であるが、平坦地や緩斜面では縦穴式を作る。
2)雪洞の掘り方
雪洞を複数で掘るときは、先頭を掘る人・掘った雪をかき出す人・かき出した雪を下へ捨てる人というように役割分担をすると良い。先頭を掘る人は全力で掘り、疲れたら他の人と交代して常にフルスピードで掘り進める。雪洞が完成したら、入り口をツェルトなどのシートでふさぎ、非常時の脱出に備え、スコップ・スノーソーを室内にしまう。ピッケル・輪かん・アイゼンなどは外に放置しておくと降雪時に埋まってなくすことがある。これらは、外に置いたままでも良いが、ひとまとめにし分かるようにしておく。 当然ながら雪洞は体力がないと掘れない。1日の行動を終えてから雪洞を掘れる体力が必要であるし、効率的に掘ることが出来るようにスコップの扱いに熟練していなくてはならない。スコップの扱い方の訓練が必要である。
1.横穴式
雪洞を掘りやすく、掘った雪を捨てやすいくらい急な斜面を選ぶ。まず、足場を掘り、踏みつけて安定化させる。足場は作業する場所であり、同時に入り口となるので、身長くらいの深さの雪を掘ることが望ましい。足場を掘った後、入り口を雪面に描いてその通り掘り始める。入り口は大きすぎると寒いので、適度に人が通れるくらいの大きさにする。1mほどそのまま真っ直ぐに掘ってから、居間となるスペースを掘るために広く掘り始める。この際、入り口より居間の床を高くすれば冷気が入り口の方へ行くので寒くなりにくい。3、4人入れるようにするには畳4畳半以上くらいの広さは必要であるので、掘る人、雪を掻き出す人と役割分担して掘る。天井は丸く滑らかに、床は平らにするように心がける。天井がでこぼこだと、凸の部分から水滴がたれてくるからである。作業がおおかた終了したらろうそく台や棚を掘ると良い。
2.横穴式(イグルー折衷式)
横穴式(イグルー折衷式)というのは、1.と同じように横穴であるが、最初に居間と同じ位の幅の穴を掘り、掘り終わってから入り口以外のスペースを雪のブロックで埋めるという方法である。入り口以外の壁はブロックを積む際にしっかり作らないと隙間風が入ったり、倒壊する危険があるので注意する。 3.縦穴式 縦穴式は、辺りの斜面がなだらかで、横穴式の雪洞が作れそうもないときの方法である。床となる大きさ決めて垂直に掘っていく。人がかがんでも頭が出ないくらいに掘ったら、天井にスキー、ストックを置いて支えにし、その上からツェルト、シートなどで天井を作る。縦穴式の雪洞は、横穴式の雪洞に比べると寒いという欠点がある。
3)雪洞内での生活
雪洞内は周りが全部雪であるから、壁や天井にふれれば雪がついて濡れやすい。動作は慎重にする。床には断熱マットを敷き、床からの冷えを遮断する。寝る時は、濡れないようにシュラフカバーは必携である。寒くて寝られない時は使い捨て懐炉が便利である。 雪洞内でストーブを使用する時は入り口を開け、酸欠に注意する。雪は結晶の間に空気を蓄えているので、換気口を設ける必要はないが、心配なら開けておく。雪洞内の照明はろうそくが良い。壁に穴を掘って設置する。人が酸欠になるより前にろうそくが消えるので、酸素量の目安にもなる。雪洞内でストーブを使用すると天井から水滴が落ちてくるので、外気を入れたり水滴のついている天井を削り取るなりして対処する。水作りは雪洞内から雪を削り取れば良い。水滴の落ちてくる天井の雪は水分に富んでいるので、水を作る時に重宝する。水の入ったポリタンクは凍結の恐れがあるので、寝るときは凍らないように人のそばに置く。

雪洞内では必ず靴を脱ぎ、足の血行を良くするとともに、汗で濡れた靴の中を乾かす。

雪洞内で快適に過ごすためには、テントシューズ、オーバーシューズがあると良い。

無ければ、靴下を2枚ほど履いた上にビニール袋やナイロンのスタッフバッグを履く。

こうすれば、多少蒸れるが少々の用事で外へ出ることも出来る。革靴やインナーブーツは凍らないようにシュラフの中に入れて寝る。

内側が濡れているようなら、中に新聞紙を入れた靴をビニール袋に入れ、シュラフ内に入れて寝れば多少乾く。

冬は雨などで服を濡らしてしまうと乾かないので、致命的な状況に陥ることがある。

雪洞内は湿度100%なので基本的には物は乾かないが、乾かすためには雪洞内でツェルトをかぶり、ツェルトの中でストーブを焚けば良い。

完全には乾かないが、生乾きの状態くらいにはなる。しかし、衣類を濡らさないために、ナイロンのスタッフバッグの内側に更にビニール袋を入れて利用し、防水に努める。
(2)雪山での服装
防風衣(パーカ・オーバーパンツ)
防風だけのものよりも、雨具も兼ねることができるものの方が良い。ゴアテックスを使用したものなど。
行動着(山シャツ・山ズボン)
ウール地もしくは汗を発散しやすい化学繊維でできたシャツ、ズボン。ストレッチ性のあるフリースでも良い。積雪期はパーカ、オーバーパンツの下に着用することが多いので、生地が厚すぎると動きが鈍くなるので注意が必要。ジャージは水分を吸っても発散しにくいので好ましくない。 防寒着(フリース・セーター・羽毛服) 厳冬期は羽毛服が必要となることがあるが、フリースまたはセーターで十分である。 下着 中厚のウールまたは化学繊維の長袖、タイツ。化学繊維にはポリプロピレン、クロロファイバー、キャプリンポリエステル、クールマックス、サーマスタットなどさまざまなものがあるが、各々の繊維の特性を理解した上で選ぶと良い。 ウール製品は発汗で濡れても水分を繊維の間に閉じ込めてしまうので冷たさを感じないですみ、身につけていると暖かくなる。混紡の場合はウールの割合は高い方が良い。デパートで売っている毛100%のらくだ下着でも利用することができる。 化学繊維は水分を繊維の間にためず、透過・発散させるので濡れても乾きが早い。水分を発散させるとき気化熱を奪われることもある。 ソックス 弾力性・吸湿性・保温性を備えた厚手のウール製の靴下の下に薄手の化学繊維製の靴下を重ね履きする。全体が同じ厚さに編んであるもの(最近は足の甲だけ薄いものがある)を使用すれば、一部分だけ足が寒いということがないので良い。予備を必ず持ち、濡れないように保管する。 オーバーミトン ゴアテックスの一枚地のもの。ミトン型、5本指型がある。5本指の方が作業しやすいが、ミトンの方が暖かい。 最近は、インナーの取り外しができるインナー一体型手袋があるが、インナーの頻繁な交換やオーバーミトンのみの着用をすることもあり、消耗したら別々に補充できるように、オーバーミトンとインナーは別々に用意することを勧める。
インナーグローブ
ウールまたはフリースのもの。ウール製品は水分を繊維の間に閉じ込め、濡れても着用していれば暖かいが、フリースは濡れてしまうと空気を蓄える部屋がつぶれてしまうので着用していても暖かくない。ウールよりフリースの方が乾きやすいが、ものをなかなか乾かすことのできない積雪期ではウール製品の利用を勧める。空気含有率について言えば、指が太い方が空気をためられるので暖かい。よってミトン型の方が保温性があるといえる。細かい作業をするときオーバーミトンを外すが、この時薄手のインナーグローブを着けているとあまり寒くないし、作業もできる。汗で濡れることが多いので予備を持つこと。
防寒帽・目出帽
ウールやフリースのもの。帽子は保温のため耳まで隠れるものが良い。春は日よけのため、ツバ付きの帽子をかぶることもある。 ロングスパッツ ズボンの裾からの雪の進入を防ぐために必要。
サングラス・ゴーグル
太陽光線が雪面で乱反射を起こし雪盲になるのを防ぎ、顔への風雪から目を守るために必要である。くもりの日でも太陽光線は差しているので装用する必要がある。